材木腐朽菌が苦手とするもの
  材木腐朽菌には、植物にとって外敵、病害菌になるものもある。
  材木腐朽菌のナラタケは多くの広葉樹を枯らす病害菌である。
  木の樹皮は紫外線、病害菌から身を守る鎧である。
  樹皮の外皮は堅牢で容易に菌糸の侵入を許さない。
  しかし木も・・・虫に食われたり、鳥から穴をあけられたり、
  風雪で枝が折れたり・・・老化したりして・・・・
  傷が出来たとき・・・内部の木質部が露出する。
  ここから材木腐朽菌の菌糸は侵入することになる。
  ナラタケ菌。
  この獰猛な菌を・・・・・腐生ランのオニノヤガラが・・・パートナーにしている。
  病害菌を共生菌・・・ラン菌としている。
  どちらが・・・獰猛で狡猾なのか解からない!

  羊歯植物の根。
  この植物の根は・・・・材木腐朽菌から犯されないように進化している。
  木性羊歯のヘゴの根は、地上に露出している。
  ヘゴの自生地は高温多湿、材木腐朽菌が主役のエリアである。
  脆弱な根では生きてゆけない。
  この材木腐朽菌から犯され難いことに着目して、
  ラン栽培では、ヘゴを用土に用いている。
  ゼンマイの根のオスマンダも水ゴケにミックスした。
  水ゴケが材木腐朽菌に犯され劣化するのをカバーするためである。

  材木腐朽菌が活動しなければ自生地では・・・・ランは生きられない。
  こういうランを鉢栽培すれば、材木腐朽菌が水ゴケなどの用土を劣化させる。
  この相反する問題を抱えているのがランの用土であった。
  用土劣化で根腐れが起こるから・・・・材木腐朽菌が繁殖出来ないものを用土としてきた。
  どうにか肥料で栽培出来たからである。
  ラン菌の生息しない用土でも・・・・どうにか・・・・今日までラン栽培されてきた。
  それは・・・あくまでも・・・・どうにか・・・である!

  SUGOI-neは、生の樹皮を高圧で圧縮してペレットにすることによって、
  ラン菌による短時間の劣化を抑制しつつ、
  少しづつラン菌が樹皮のセルロース、リグニンなどを分解して・・・
  
ランに供給するという理想的な用土である。
  生の樹皮を使うことによってラン菌による分解を枯れ落ち葉より遅らせることに成功したのである。
  更に、生樹皮には形成層を含むことから、植物が必要とする全成分を含有する。
  この成分とラン菌の働きによって、優れた炭素循環が構築される。

  地球は複雑である

    赤道直下の熱帯雨林の島ボルネオ島。
    ラン原種の宝庫である。
    恐らく未発見のラン新種も・・・深い熱帯雨林の中で密かに生き続けているに違いない。
    地球最後の秘境かもしれない。
    しかし、この島も開発が進み・・・熱帯雨林は激減しているという。


    この熱帯雨林の島に・・・・泥炭が存在する。
    毎年生産された枯れ葉が材木腐朽菌に分解されることなく地中に堆積している。
    前記したように、充分な水分、温度、枯れ葉があれば、材木腐朽菌は短期間に、
    枯れ葉を分解して、数ヶ月で枯れ葉は原形を留めない。
    なぜ、泥炭が存在する????
    不思議である。

    ものすごい雨が・・・・大地を水に浸した。
    空気が遮断される。
    好気性菌の材木腐朽菌が・・・酸素の無い水中では繁殖出来ない。
    枯れ落ち葉は・・・・分解されないまま堆積する。
    水中でも生息出きる嫌気性菌はリグニン、セルロースの貧しい枯れ葉を分解できない。
    嫌気性菌は・・・米糠、牛糞、鶏糞・・・のように窒素が多いものでないと、
    繁殖し、醗酵、腐敗は出来ないからである。




  タイガー、ツンドラ地帯の泥炭、ピートモスが10m、20mも・・・
   地下、永久凍土の中に堆積しているのは、
   温度が低いために材木腐朽菌が分解できなかったからである。

     
地球の陸上の植物が生息しているところには、
必ず枯れ葉、植物死骸が生まれる。
これを微生物・・・・材木腐朽菌が分解し・・最終的に炭酸ガスとして、
大氣に放出されるのが炭素循環である。

このことから、植物自生地における炭素循環には、
必ず材木腐朽菌の繁殖、活動が深く関与している。
材木腐朽菌(ラン菌)よる炭素循環には下記の条件が絶対である。
 1 空気、酸素が多くあること。
    材木腐朽菌は好気性菌である。
 2 温度。
    材木腐朽菌が活発に生育する温度は、最低8℃から最高30℃前後である。
 3 水分
    材木腐朽菌(宇井清太新発見のラン菌)が活発に生育する水分は、
    湿度65%前後から95%前後である。
 4 枯れ葉、植物死骸
    材木腐朽菌は枯れ葉、植物死骸のセルロース、リグニンの
    高分子炭水化物を栄養にするが、雨水に含まれる尿素、窒素化合物が、
    より高い繁殖を促進する。

 地球上の環境条件は多様である。
 1から4の条件が揃わないところでは、炭素循環は抑制される。
   砂漠では3と4が揃わない。
   南極、北極圏ツンドラ、タイガー、高山では、温度の高い期間は短いから、
       炭素循環は抑制され、枯れ葉、水ゴケなどは、長い年月をかけて分解される。
       高山植物、ツンドラ、タイガーに自生する植物は、温度、炭素循環由来の養分に支配され、
       大きく育つことは出来ない。
       枯れ葉も植物死骸も一年の期間で100%分解することはない。
       分解しなかったものは毎年堆積し、やがて泥炭、水ゴケはピートモスになって堆積する。
       堆積した泥炭、ピートモス内部は酸素が少ないから材木腐朽菌は生息できない。
       生息出来る菌は嫌気性菌である。
       嫌気性菌によるメタン醗酵が行われ、膨大な量のメタンガスが貯蔵される。
       地表では前記したように僅かではあるが材木腐朽菌による炭素循環が行われる。
       こういう場所にも多くのラン科植物が自生する。
       材木腐朽菌のラン菌が生息しているからである。
       アツモリソウ、チドリ類などは、この極めて貧しい炭素循環の中で生きるランである。

   サバンナ
      アフリカ、南アメリカ、中アメリカ、中央アジア、インド・・・・。
      雨期と乾期。
      雨期になると、雨の水分で木も草も緑の葉をつける。
      乾期になると水分がなくなるので木は葉を落とし、草は枯れあがる。
      次の雨期には、材木腐朽菌が落ち葉と植物死骸を分解する。 
      ここには乾燥の大地でも生きられる特別な植物のみ生存出来る。
      枯れ葉、植物死骸が生まれるから、細々であるが炭素循環がある。
      限られた枯れた、植物死骸由来の養分で・・・植物は生きることになる。

      サバンナの草原には、この過酷な雨期乾期の変化に適応したランが自生する。
      岩、木には・・・シャボテン、多肉植物のように進化した着生ランも生息する。
      極度に小形した、葉の数も少ないランが多い。
      葉、茎は高温乾燥に耐えられる構造を持つものが多い。
      乾期だからといってカラカラの乾燥はない。
      昼夜の温度較差が大きいから、夜霧が発生する。
      この霧の水分も材木腐朽菌が炭素循環する水分になる。
      この湿度があるために、ラン菌は生きて、ランのプロトコームは生きられる。
      

   石灰岩、蛇紋岩地帯
     若いこの地帯は、非常に貧しい栄養条件である。
     なぜ貧しいかといえば、若い石灰岩で生きられる植物は特殊な植物で、
     一般の植物が生きられないからである。
     したがって僅かな枯れ葉、植物死骸が地表に堆積する。
     この僅かな枯れ葉にも材木腐朽菌は生息し、分解する。
     こういうほかの植物が生きられない場所にもランは自生する。
     こういう場所にもラン菌が生息するからである。
     非常に小形のラン、非常に生育の遅いランにとって、
     他の植物が繁茂出来ないということは、逆に都合が良いことになる。
     平家の落人のような感じである。
     この石灰岩、蛇紋岩地帯のランはしばしば誤解される。
     ここに自生するランは、石灰、蛇紋岩を好むから・・・・ここに自生するのだ・・・と。
     そういうことではなく、こんな場所でも生きられる材木腐朽菌、ラン菌がいるから、
     ランは・・・その菌と共に生きているのである。
     石灰岩、蛇紋岩の裂け目、窪みには、枯れ葉が吹き溜まりとなって堆積している。
     枯れ葉、植物死骸があるところ、必ず材木腐朽菌は生息しているということっである。

   地中海気候地帯
     雨期乾期が明瞭でない・・・・一年中乾燥気味の気候。
     中央アジアにも類似の気候がある。
     この地帯には、アイリス、ニンニク、タマネギ、チューリップ・・・・
     コルチカム・・・・アネモネ・・・・など特徴ある植物が自生する。
     秋から初夏に繁茂、乾燥する初夏から秋に葉を落とし休眠する植物も多い。
     当然枯れ葉、植物死骸が出るから炭素循環はある。
     短期間の光合成で急激に養分を球根に蓄積できるような植物が多い。
     このような植物でも、炭素循環由来の成分、糖は必要である。
     この地帯の植物には貧栄養植物が多い。
     こういう植物に肥料を与えると、球根腐敗病、ナンプ病が多発する。
     地中海気候の原野にもラン科植物は自生する。

  温帯の広葉樹、針葉樹林地帯
     雨、温度、枯れ葉もあるので、材木腐朽菌の活動は春から秋までの期間の及ぶ。
     枯れ葉、植物死骸の分解は早く行われるので、土壌は肥沃で、
     多くの草木は繁茂する。
     当然多くの枯れ葉、植物死骸が毎年生まれる。
     材木腐朽菌に種類も多く、
     豊な炭素循環が行われている場所で、肥沃な地表を形成する。
     温暖な期間が長いから、材木腐朽菌の活動する期間も
     4月から9月頃まで約半年の長期間になる。
     多くの植物の種が自生できる条件で、ラン科植物も多く自生する。
     しかし、ラン科植物の競争相手の植物も多くあり、
     ラン科植物は、このエリアで自生するには、他の植物が少ない場所、
     よく生育出来ない場所になる。
     多くの種ではないが着生ランも自生する。

  熱帯雨林
     地球の陸の約8%程度であるが、多雨、高温条件で、
     多様な植物が生息する。
     多くの枯れ葉、植物死骸が生産されるが、材木腐朽菌の活動が活発で、
     非常に短時間で枯れ葉、植物死骸は分解される。
     したがって、このエリアの表土は、温帯、寒帯に比較すると非常に薄く、浅い。
     しかし、この土壌内に多くの材木腐朽菌(ラン菌)が生息することから、
     ラン科植物26000種の80%近くの種が、このエリアに自生する。
     ラン菌とランの共生関係が、豊な炭素循環の中で構築されている。

  樹上
    熱帯雨林、熱帯、温帯の樹上で、コケの死骸、枯れ葉が堆積する場所では、
    温度、水分もあることから、この場所でも材木腐朽菌(ラン菌)が生息して、
    炭素循環を行っている。
    こういう樹上には、多くの着生ランが自生する。
    着生ランは空中が好きなのではない。
    空気が好きなのではない。
    地上は既に生長の早い植物が占領しているから、地上では、
    生育の遅いランは生きることは出来ない。
    そういうことで、やむなく・・・豊な地上を捨て・・・・僅かな炭素循環がある・・・・
    樹の上で生活しているのである。
    ランにとって「楽園」ではないのである。
    競争相手がいないだけである。

  火山エリア
    新しい火山では、火山灰が地表を覆い不毛の地になる。
    当然、枯れ葉がないから炭素循環はない。
    しかし、植物は多様である。
    この不毛の地を開拓する植物がある。
    コマクサ、カラマツ・・・・ツツジの仲間。
    先達植物。
    これらの植物が細々と枯れ葉を作り出す。
    直ぐに材木腐朽菌がこの僅かな枯れ葉を求めて・・・・生息始める。
    次第に植物数が多くなり、枯れ葉が多くなると・・・・
    他の植物が生息を始める。
    より多くの炭素循環が行われる土壌になると、
    コマクサ、カラマツ、ツツジ・・・・は姿を消す。
    カラマツ、ツツジも・・・・菌根植物である。
    死火山の炭素循環の多い場所では、ラン科植物も生息するようになる。


 以上のように炭素循環は材木腐朽菌の支配されている。
 換えていえば、材木腐朽菌(ラン菌)に・・・・地球の陸上は支配されているとも言える。


 ランは狡猾にも、地球の陸の地表の支配者、権力者である材木腐朽菌をパートナーに選んだ。
 生育の遅い、小さな負け組みの植物ランが、権力者ラン菌を後盾にして生きているのである。
 腐生ランに至っては・・・・完全な依存生活である。
 炭素循環の中で、功妙に生きる術を身につけたランである。


 以上のように、ランは地球のいたるところに自生しているが、
 全て枯れ落ち葉、植物死骸のある場所である。
 材木腐朽菌(ラン菌)による炭素循環のあるところである。
 
 しかし、これまでのラン栽培では、ラン菌の生息しない、炭素循環のない用土で栽培してきた。
 ラン菌のいない鉢というのは・・・・
 地球上にない・・・・エリアである。
 いかに異常な場所が・・・ラン栽培鉢であるか理解出来よう。
 逆に、水ゴケ、バークを分解する材木腐朽菌を敵視してきたのが、これまでのラン栽培である。
 ラン菌でない微生物は・・・・用土を劣化させるからである。
 宇井清太によるラン菌の発見が、いかにラン栽培で重要なことか理解出来よう。
 材木腐朽菌にも有用な菌と、用土を劣化させる菌があるということである。
 
 
    
 
地球の各エリアにおける炭素循環
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